人を引き寄せる不思議な場所、晴耕雨読

因島大橋が見渡せる開放的な海岸が心地よい因島大浜町に、コミュニティスペース「晴耕雨読」はある。
 
かつては保育所だったが、2016年に閉所。地域住民で旧保育所施設の活用について議論を重ね、コミュニティスペースとして残すこととなった。
 
大浜区長会が所有するこの施設の管理人を務めるのは、今回お話を伺った株式会社プラスの峰松さん(写真:右側)と木下さん(写真:左側)。峰松さんは地元因島出身、木下さんは滋賀県出身。この若い二人がいま、因島の熱量を沸々と上げている。

島を出る=島が嫌い、ではない

峰松さんは大学進学を機に滋賀へ。
当時は島を出るのが楽しみで仕方がなかったという。根底にあるのは、外で実力をつけ、いつかは因島に帰ってきたいという思いだった。大学でのサークル選びにもそれは現れていた。
 
「『丹後村おこし活動チーム』というサークルに入り、限界集落にある古民家の修繕や農業の手伝いなどを行っていました。将来因島のために役立つのではという思いで入りましたが、単純に活動は楽しかったです。そこで木下君とも会いました。」
 
大学卒業後は大阪の企業へ就職。その間も因島の少子高齢化は進み、店は少なくなってきている現状を横目に、このまま大阪にいていいのかと葛藤していたという。今の自分に何が出来るのかと悶々とする中、2016年に出会ったのが、現在勤める会社の社長だった。
 
「アイデアを持っている人はたくさんいるけれど、実際に行動に移せる人は少ないですよね。僕もそのうちの1人ですが、島にも実践者はいないのかなと思っていた時に出会ったのが、今の社長でした。本業は広告業ですが、話を聞くと『造船鉄工祭』や『SIGNAL』など因島のまちおこしに関わることをたくさんしていて、僕も何か手伝える事があるかもしれないと思いました。タイミングよく晴耕雨読の管理人を探していたらしく、『やってみない?』と声をかけてもらったのが、因島に帰るきっかけになりました。」

社長についていったら面白そう、が二人の共通の想い

峰松さんと木下さんは同じサークルの先輩・後輩だった。
 
木下さんは、峰松さんからの誘いで因島に移住したのかと想像したが、ちょっと違うルートなのがとても興味深い。
 
「僕が1回生の時に峰松さんが4回生でしたが、正直ほとんど接点がなく、連絡先すら知りませんでした。卒業後に会うこともなかった。しかし、就職してから数年が経ち転職を考えていた時に、サークルでお世話になった方に相談したところ、『峰松が因島に帰ってなんか面白い事やっているらしい。1回連絡してみたらどうだ?』と言われて。その日のうちに連絡先を知っている別の先輩経由で、峰松さんに連絡しました。」
 
その翌月には因島の晴耕雨読を訪れた。社長、峰松さんとの会話は盛り上がり、何時間にも及んだという。木下さんも社長の考えに共感し、この人について行ったら面白そうだと考え、思わず「ここで働かせてもらえますか?」と聞いていた。
 
社長の「今、宅建(宅地建物取引士資格)持ってる人探してるんだけど、持ってる?」の質問に、「持ってます!」と即答。
 
社長が求めていた人物像に近かったこともあり、あっさり採用が決まったという。

晴耕雨読というチャレンジできる場所

晴耕雨読は元保育所の施設を活用して、様々に利用されている。
 
「教室ではママさんのハンドメイド作品の販売やワークショップなど色々活用してもらっています。調理室もあるので、そこでうどんやパスタを作って販売される方もいます。まずはここで力をつけてもらって、ゆくゆくは自分の店を出す足掛かりにしてもらえると嬉しいですね。」
 
イベントも何もない平日は学校が終わった小学生が自分の家の様に帰ってきて、仕事中の峰松さん達に遊んでもらおうとちょっかいを出す光景が見られるのも、ここならではだろう。

それぞれのこれからについて

外から来た木下さんに、因島を今後どういう町にしていきたいか聞いた。
 
「様々な価値を提供するスポットを因島に作って、外から来た人がその価値にお金を使えるような場所にしたいです。因島には宿泊施設が少ないと感じているので、今は民泊を始めるために、空き家を一軒改修しています。宿泊した方が食事をする場所も必要になるので、次は飲食店も作りたいと考えています。」
 
地元出身の峰松さんに、どんな立ち位置になっていきたいか聞いた。
 
「地方に移住してくるときに、仕事や住むところなど、壁って色々あると思いますが、コミュニティも大事だと思います。空き家バンクなどのマッチングサイトは全国どこでもありますが、コミュニティに溶け込むところまでフォローしてくれるところは数多くないと思います。そこを全面的に僕らがバックアップ出来ればいいなと考えています。将来的には因島だけじゃなく尾道全体、広島県全域も紹介できたらいいなと考えています。」

移住を考えている人へ

二人とも、とにかく「晴耕雨読」へ一度遊びに来てもらいたいと口をそろえて話す。
 
「移住する予定がなくても、『ちょっと因島に興味があるなぁ。』というラフな感じで、晴耕雨読へ僕らを訪ねて来てもらいたいです。もちろん移住希望の方も全力でサポートします!いつでもお待ちしています!」
 
木下さんは、今度、大学の後輩数人を1週間ほど因島に招待し、空き家の改修を一緒にしていく予定だ。その繋がりの中から因島に興味を持つ人が増えて、ゆくゆくは因島への移住者が来てくれればと思っている。
 
元保育所だからだろうか、晴耕雨読はどんな人にも馴染む不思議な場所だ。
 
(取材:平成31年1月)